要点まとめ
- 喫煙は組織への酸素の供給を低下させ、炎症細胞や修復にかかわる細胞の働きを弱めることで、傷の治りを遅らせる可能性があるとまとめられています[1]。
- さまざまな種類の手術を扱った55件の研究を集めた2025年のメタアナリシスでは、手術前に4週間以上禁煙した場合、喫煙を続けた場合と比べて傷の合併症のリスクが33%低くなりました[2]。
- 美容外科手術の患者さんを対象としたレビューは、手術前の4週間は完全に禁煙し、手術した部分の傷が最初にふさがる(一次治癒)まで禁煙を続けることを提案しています[3]。
- 短期間の禁煙で喫煙の影響がすべてなくなるわけではないため、禁煙を始める時期と手術の日程は、喫煙量や手術の種類に合わせて専門医と決める必要があります[1, 2]。
喫煙が傷の治りに影響するしくみ
美容外科のカウンセリングでは、たばこを吸っているかどうか、1日にどのくらい吸うかを詳しくお聞きします。手術した部分は血液が運ぶ酸素と栄養によって治っていくため、喫煙の習慣は回復の経過を予測するうえで大切な情報です。
177件の研究をまとめた2012年のシステマティックレビューによると、喫煙は組織への酸素の供給と代謝を一時的に低下させます[1]。また、炎症細胞が傷に集まって細菌を処理する働きが弱まり、線維芽細胞(fibroblast)の移動と増殖、コラーゲンの合成も減るとまとめられています[1]。このレビューは、こうした変化が傷の治りの遅れや合併症につながると結論づけています[1]。
美容外科手術の患者さんを対象とした2015年のレビューも、たばこが引き起こす低酸素の状態、組織の虚血(ischemia)、免疫の異常が、傷の治る過程を変えると説明しています[3]。そして、こうした影響の一部は禁煙によって元に戻せると考えています[3]。
禁煙すると何が変わりますか
2012年のレビューによると、禁煙の後、組織への酸素の供給と代謝はすぐに回復し、炎症細胞の反応は4週間以内に一部回復します[1]。一方で、組織を新しくつくる増殖の反応は、その後も低下したままであるとまとめられています[1]。禁煙の効果が現れるまでには時間がかかり、すべての影響がすぐになくなるわけではないということです。
2025年のシステマティックレビューとメタアナリシスは、55件の研究を集めて、手術前の禁煙期間と合併症の関係を調べました[2]。喫煙を続けた場合と比べて、2週間以上禁煙すると肺の合併症が27%、4週間以上では29%、8週間以上では37%減りました[2]。4週間以上禁煙した場合は、傷の合併症のリスクが33%、合併症全体のリスクが31%低くなりました[2]。
ただし、短期間の禁煙は、手術部位の感染や出血にははっきりとした影響を示さず、禁煙した方でも、たばこを一度も吸ったことがない方と比べると肺の合併症が多くみられました[2]。この分析はさまざまな種類の手術を受けた成人を対象としているため、美容目的の手術でも同じ大きさの差が現れるとは言い切れません。
手術前後の禁煙期間についての提案
美容外科手術の患者さんを対象とした2015年のレビューは、これまでの文献が、手術前の3〜8週間と手術後4週間までの禁煙をすすめているとまとめています[3]。そのうえで、手術前の4週間は完全に禁煙し、手術した部分の傷が最初にふさがる時期(一次治癒、2週間)まで禁煙を続けることが、手術の条件をよくすると考えられると結論づけています[3]。
肥満症の手術(減量手術)を受けた患者さんを対象とした2021年のシステマティックレビューでは、手術前1年以内の喫煙が、術後30日以内の死亡や主な合併症、特に傷と肺の合併症のリスクを高める独立した要因であることが示されました[4]。このレビューは、ガイドラインがすすめる最低6週間の禁煙よりも前の喫煙であっても、合併症に関係する可能性があると考えています[4]。手術の分野が異なるためそのまま当てはめることは難しいものの、禁煙期間が長いほど結果がよくなったというメタアナリシスと同じ方向の結果です[2]。
ほかの手術分野で報告されているリスク
皮膚や組織を血管ごと移植する頭頸部の再建手術(遊離皮弁、free flap)を扱った2021年のメタアナリシスでは、喫煙が血腫(haematoma)のリスクを19.12%、手術の合併症全体のリスクを4.57%高めることと関連していました[5]。一方で、皮弁がうまく生着しないこと、手術部位の感染、瘻孔(ろうこう)については、喫煙者と非喫煙者のあいだに有意な差はありませんでした[5]。主に頭頸部のがんによってできた欠損を補うこの手術について、著者らは、禁煙をすすめることは依然として重要であるものの、調べた合併症を防ぐために手術を延期してまで禁煙期間を設ける必要はないと考えています[5]。含まれた19件の研究のうち18件が後ろ向き研究だったため、著者らは、確かな結論を出すには、より質の高い研究が必要だと述べています[5]。
足と足首の手術を扱った2019年のレビューは、喫煙している整形外科手術の患者さんでは、痛みがより強く、全体的な満足度が低く、傷の治りに関する合併症が有意に多いとまとめています[6]。このレビューは、エビデンスレベルでいえば専門家の意見にあたります[6]。いくつもの手術分野で似た方向の結果が報告されていることが、カウンセリングで喫煙の有無を丁寧に確認する理由です。
禁煙をサポートする方法と手術後のケア
2015年の美容外科手術のレビューは、ニコチン置換療法(nicotine replacement therapy)を用いると短期的な禁煙の成功率が2倍になるとまとめ、依存度が高い患者さんは禁煙の専門家のサポートを受けるのが望ましいとしています[3]。どの方法を用いるかは健康状態によって異なるため、医療スタッフと相談して決めます。
手術の後に、再びたばこを吸い始める方も少なくありません。肥満症の手術のレビューでは、手術後も喫煙を続ける患者さんが最大17%と報告されています[4]。傷が治るあいだも禁煙を続けることが、回復計画の一部です。
カウンセリングで伝えていただきたいこと
喫煙量を少なめに伝えたり、隠したりすると、リスクを正しく評価することが難しくなります。回復のスピードは喫煙のほかにも、手術の範囲、体質、ほかの病気によって人それぞれ異なるため、下記の内容をありのままに伝え、ご自身に合った禁煙のスケジュールは専門医と一緒に決めることをおすすめします。
- 現在の喫煙の有無、1日の喫煙量と喫煙期間
- 紙巻きたばこのほか、電子たばこや加熱式たばこなどのニコチン製品を使っているかどうか
- 禁煙を始めた場合は、その時期
- これまでに禁煙を試みたことと、難しかった点
- ほかの病気と服用中の薬
よくある質問
- 手術の何週間前からたばこをやめるべきですか?
- 美容外科手術の患者さんを対象としたレビューは、手術前の4週間は完全に禁煙し、手術した部分の傷が最初にふさがる(一次治癒)まで禁煙を続けることを提案しています[3]。さまざまな手術をまとめたメタアナリシスでも、禁煙期間が長いほど結果がよくなりました[2]。実際の期間は手術の種類や喫煙量によって変わることがあるため、担当医の案内に従うことをおすすめします。
- 手術の直前の数日だけやめても、効果はありますか?
- 禁煙の後、組織への酸素の供給はすぐに回復しますが、炎症細胞の反応は4週間以内に一部しか回復せず、組織をつくる反応はその後も低下したままであるとまとめられています[1]。メタアナリシスが合併症の減少を報告した禁煙期間も、2週間以上、4週間以上、8週間以上でした[2]。禁煙を始めるのが遅くなった場合は、隠さずに伝えて、日程を一緒に調整するほうが安全です。
- 電子たばこやニコチン製品なら大丈夫ですか?
- 参考にした資料は、電子たばこを個別には扱っていません。傷が治るしくみをまとめたレビューでは、ニコチンは組織の酸素の状態には影響しなかったものの、炎症反応を弱めるとみられ、その影響は大きくないとまとめられています[1]。これは電子たばこが安全だという意味ではないため、どのようなニコチン製品でも使っているかどうかをすべて伝え、医療スタッフの判断に従うことをおすすめします。
参考文献
- Sørensen LT. Wound healing and infection in surgery: the pathophysiological impact of smoking, smoking cessation, and nicotine replacement therapy: a systematic review. Ann Surg. 2012.PubMed 22566015DOI
- Tang E, Rodriguez RM, Srivastava A, et al. Impact of short duration smoking cessation on post-operative complications: A systematic review and meta-analysis. J Clin Anesth. 2025.PubMed 40840082DOI
- Pluvy I, Garrido I, Pauchot J, et al. Smoking and plastic surgery, part I. Pathophysiological aspects: update and proposed recommendations. Ann Chir Plast Esthet. 2015.PubMed 25447216DOI
- Chow A, Neville A, Kolozsvari N. Smoking in bariatric surgery: a systematic review. Surg Endosc. 2021.PubMed 32524412DOI
- Garip M, Van Dessel J, Grosjean L, et al. The impact of smoking on surgical complications after head and neck reconstructive surgery with a free vascularised tissue flap: a systematic review and meta-analysis. Br J Oral Maxillofac Surg. 2021.PubMed 33546845DOI
- Beahrs TR, Reagan J, Bettin CC, et al. Smoking Effects in Foot and Ankle Surgery: An Evidence-Based Review. Foot Ankle Int. 2019.PubMed 31423824DOI
この記事は、DOY JUN美容外科が海外の学術誌に掲載された論文の要約(抄録)をもとに韓国語でまとめた一般的な健康情報を、翻訳したものです。治療方法や結果は個人の状態によって異なるため、正確な診断と治療計画は専門医へのご相談でご確認ください。




