要点まとめ
- 年齢とともに顔の特定の脂肪のコンパートメントで脂肪が減ることが、顔の老化の主な原因のひとつと説明されており、自分の脂肪でこのボリュームを補う方法が顔の脂肪注入です[1]。
- 注入した脂肪細胞のかなりの部分が失われたり吸収されたりすることがあり、ボリュームが減って施術をくり返す必要が出てくる場合があります[2]。
- 長い期間にわたるボリュームの減少と吸収は今も大きな課題で、そのために結果を予測しにくいと指摘されています[3]。
- 生着を高めるための手技は改善されつつありますが、標準化された方法は不足しており、脂肪を注入する技術についての発表された根拠はごくわずかです[2]。
- この記事で参考にした論文の要旨には、顔の脂肪の生着率を数値で示した資料がないため、残る量は部位や方法、人によって異なると考えるのが現実的です。
顔はなぜこけるのか、脂肪注入は何をするのですか
顔の老化は、しわだけの問題ではありません。2024年のレビューは、年齢とともに顔の特定の脂肪のコンパートメント(fat compartments)で脂肪が減ることが、顔の構造的な老化に大きく関わっていると説明しています[1]。自家脂肪注入(autologous fat grafting)は、自分の体のほかの部位から脂肪を採取して精製し、こけた部位に注入してボリュームを補う方法です。同じレビューは、自分の脂肪は量が豊富で手に入れやすく、体になじみやすい素材であるため、顔の萎縮を整える際に好まれる充填材だと評価しています[1]。
顔の老化では組織のたるみとボリュームの減少が同時に起こるため、両方をあわせて治療することでよい結果が得られるという説明があります[4]。2015年のレビューは、顔の萎縮がはっきりしている方では、肌の表面の治療やリフトアップの手術だけでは十分に改善しないことが多いとしています[5]。同じレビューは、適切に行われた脂肪注入は、年齢や病気によって萎縮した顔に、はっきりとした長く続く改善をもたらしうると評価しています[5]。たるみもある場合は、フェイスリフトでゆるんだ組織を整えながら、脂肪でボリュームを補う方法(lift-and-fill)が用いられます[4]。
どの部位に用いられ、どのような方に検討されますか
2020年のレビューは、こめかみ、額、目の上下、頬、口のまわり、ほうれい線、あごのライン、あご先のように、一般的なフィラーで治療する部位であれば、脂肪でも輪郭を整えられるとしています[4]。輪郭が自然で、まわりの組織とよくなじむことが利点として挙げられています[4]。また、顔の脂肪のコンパートメントの解剖を理解し、どの部位がどのくらいこけているのかを体系的に評価することが、自然な結果への鍵だと強調しています[4]。
2021年のレビューは、顔の老化には日光によるダメージ、ボリュームの減少、肌が薄くなる変化がともに含まれるため、複数の方法を組み合わせるアプローチが必要だとしています[6]。国際美容外科学会(ISAPS)の統計では、顔の脂肪注入は顔と頭部の手術に含まれ、男性に多く行われた手術の上位5つにも入っていました[7]。ただし、脂肪注入が合っているかどうかは、こけやたるみの程度、肌の状態、脂肪を採取する部位が十分にあるかどうかによって異なるため、診察で判断します。
マクロファット、マイクロファット、ナノファットはどう違うのですか
脂肪を採取して処理するときに使う管(カニューレ)の太さやフィルターの方式によって、注入する脂肪は、粒の大きさと細胞の構成をもとに、マクロファット(macrofat)、マイクロファット(microfat)、ナノファット(nanofat)の3種類に分けられます[1]。マクロファットとマイクロファットは、こけた部位のボリュームを補いながら肌の質の改善にも役立つと説明され、ナノファットは肌のきめや色素を改善すると報告されています[1]。
同じレビューは、顔の部位ごとに老化のあらわれ方が異なるため、部位に合わせて脂肪の種類を選び、一人ひとりに合わせた計画を立てることが大切だとしています[1]。2021年のレビューも、顔の解剖学的なコンパートメントごとに、減ったボリュームを脂肪で置き換える注入の手技を紹介していますが、著者らがエビデンスレベルを4と表記した文献であるため、比較研究で確かめられた結果とみなすことは難しいといえます[6]。
生着率を数字で示しにくい理由
脂肪注入は20世紀のはじめに初めて紹介されましたが、長い期間ボリュームが保たれるかどうか信頼しにくいという理由で、しばらくはあまり用いられませんでした[3]。この20年のあいだに、脂肪を採取し、処理し、注入する方法についての研究が多く積み重ねられ、信頼性は大きく向上しました[3]。しかし同じレビューは、長い期間にわたるボリュームの減少と、注入した脂肪の吸収(resorption)が今も大きな課題で、そのために結果を予測しにくいとしています[3]。
2021年のレビューは、脂肪細胞がかなり多く失われたり吸収されたりして、見た目のボリュームが減り、施術をくり返す必要が出てくる場合があると説明しています[2]。脂肪細胞の損失は、注入の過程の4つの段階のすべてで起こりうるとしています[2]。2022年のレビューも、注入した脂肪が長く生き残って保たれるかどうかは歴史的に大きな課題であり、生着を高めるために過程の各段階を見直しているとしています[8]。
この記事で参考にした論文の要旨には、顔の脂肪の生着率を数値で示した資料はありません。カウンセリングで特定の生着率を聞いた場合は、どの部位で、どの方法で、どのくらいの期間の後に測定した値なのかをあわせて尋ねてみることをおすすめします。
生着を高めるための方法と、根拠の限界
脂肪を吸引する方法、脂肪を処理する方法、補助的な手技を加えた脂肪注入(assisted fat grafting)など、さまざまな新しい手技が、脂肪細胞の生存や血管の再形成(revascularization)、注入の結果を改善したと報告されています[2]。しかし同じレビューは、標準化された手技や教育が不足しており、脂肪の処理や加える物質についてさらに研究が必要だとしています[2]。特に脂肪を注入する技術については発表された根拠がごくわずかで、現在の方法の多くは施術する医師の経験に頼っていると指摘しています[2]。
間質血管細胞群(stromal vascular fraction)、体外で培養した脂肪由来幹細胞(adipose-derived stem cells)、血小板由来成長因子(platelet-derived growth factor)を脂肪に加えて生着を助ける方法が、さかんに研究されています[3]。脂肪をより小さなかけらに分けると、注入した細胞が酸素や栄養を受け取りやすくなり、生存に有利になりうるという考え方もありますが、理論上の説明として紹介されたものです[3]。こうした手技は動物実験と一部の人を対象とした研究で試された段階であるため、効果が確立されたとはいえません[3]。
回復とリスク、カウンセリングで確認したいこと
脂肪を採取する部位と注入する部位のどちらにも腫れや内出血が出て、おさまるまでに時間がかかります。注入した脂肪が予想よりも大きく減ったり、むらになって残ったりすることもあります。この記事で参考にした論文の要旨は合併症の頻度を扱っていないため、起こりうる合併症とその対処法は、実際に診察した専門医から具体的に説明を受けることをおすすめします。
- ボリュームの減少とたるみのうち、どちらが主な悩みなのか
- 脂肪を採取する部位と、その部位の回復の経過
- 部位ごとにどの種類の脂肪を使う予定なのか
- ボリュームが減ったときの追加の施術の可能性と時期
- 起こりうる合併症とその対処法
よくある質問
- 顔の脂肪注入は1回で終わりますか?
- 注入した脂肪細胞のかなりの部分が吸収されることがあり、ボリュームが減って施術をくり返す必要が出てくる場合があると説明されています[2]。何回必要かは、部位や一人ひとりの組織の状態によって異なります。最初のカウンセリングで、追加の施術の可能性もあわせて確認しておくことをおすすめします。
- 生着率は何パーセントと考えればよいですか?
- この記事で参考にした論文の要旨には、顔の脂肪の生着率の数値はありません。長い期間にわたるボリュームの減少と吸収は、今も結果を予測しにくくしている課題として挙げられています[3]。ひとつの数字よりも、ご自身の顔のどの部位で、どの程度の変化が期待できるのかを相談するほうが現実的です。
参考文献
- Strong AL, Rohrich RJ, Tonnard PL, et al. Technical Precision with Autologous Fat Grafting for Facial Rejuvenation: A Review of the Evolving Science. Plast Reconstr Surg. 2024.PubMed 37159906DOI
- Davis S, Rizk J, Gunton JE. Cosmetic Fat Transplantation: A Review. Curr Mol Med. 2021.PubMed 32619169DOI
- Brooker JE, Rubin JP, Marra KG. The Future of Facial Fat Grafting. J Craniofac Surg. 2019.PubMed 30817531DOI
- Schultz KP, Raghuram A, Davis MJ, et al. Fat Grafting for Facial Rejuvenation. Semin Plast Surg. 2020.PubMed 32071577DOI
- Marten TJ, Elyassnia D. Fat grafting in facial rejuvenation. Clin Plast Surg. 2015.PubMed 25827566DOI
- Crowley JS, Kream E, Fabi S, et al. Facial Rejuvenation With Fat Grafting and Fillers. Aesthet Surg J. 2021.PubMed 34002771DOI
- Triana L, Palacios Huatuco RM, Campilgio G, et al. Trends in Surgical and Nonsurgical Aesthetic Procedures: A 14-Year Analysis of the International Society of Aesthetic Plastic Surgery-ISAPS. Aesthetic Plast Surg. 2024.PubMed 39103642DOI
- Dayal A, Bhatia A, Hsu JT. Fat grafting in aesthetics. Clin Dermatol. 2022.PubMed 35190062DOI
この記事は、DOY JUN美容外科が海外の学術誌に掲載された論文の要約(抄録)をもとに韓国語でまとめた一般的な健康情報を、翻訳したものです。治療方法や結果は個人の状態によって異なるため、正確な診断と治療計画は専門医へのご相談でご確認ください。