要点まとめ
生着はなぜ予測しにくいのですか
生着とは、移した脂肪が新しい場所で血液の供給を受けて生き残ることをいいます。自家脂肪注入は、やわらかい組織の若返り、ボリュームの補充、体型の修正に広く用いられていますが、注入の後に脂肪が吸収される割合を予測しにくいことが大きな課題として挙げられています[1]。
2020年のレビューは、脂肪組織の生物学的な仕組みを生かせば理論上は生着を高められるものの、最もよい施術方法についての合意はまだないとしています[1]。別のレビューも、脂肪注入は体になじみやすく自然な方法ですが、標準化された方法がなく、吸収の程度を予測しにくいため、保たれる量には限界があるとまとめています[3]。
段階ごとに起こる損失
脂肪注入の過程では、かなりの量の脂肪細胞が失われたり吸収されたりして、ボリュームが減り、施術をくり返す必要が出てくる場合があります[2]。脂肪細胞の損失は、注入の4つの段階のすべてで起こりうると説明されています[2]。脂肪の採取方法や脂肪の処理、補助的な物質をあわせて用いる注入といった新しい手技が、脂肪細胞の生存と血管の再形成を改善したという報告もあります[2]。
しかし、脂肪を注入する技術については発表された根拠がごくわずかで、多くは施術する医師の経験にもとづいており、標準化された手技や教育も不足していると指摘されています[2]。これまでに開発された方法は、次の項目でそれぞれ異なります[3]。
- 脂肪を採取する部位
- 採取の前に注入する薬液を使うかどうかと、その量
- 採取の方法、管の太さ、吸引の圧力
- 脂肪を処理する方法と、注入する方法
採取方法についての根拠
2018年のレビューは、最も適した採取部位、組織を直接切り取る方法と手で吸引する方法と脂肪吸引の手技の違い、すすめられる管の太さ、圧力、前もって注入する薬液の量を検討しました[3]。しかし、方法どうしの比較の結果は、測定した評価項目によって異なり、最も効率のよい方法を決めることは難しいとしています[3]。
また、脂肪の生存やボリュームの増加を判定する標準的な検査法がないことも、限界として挙げられています[3]。ある方法が生着に最もよいという主張は、こうした限界をふまえて受け止める必要があります。
脂肪を受け入れる部位の環境
脂肪の中の幹細胞がどうなっていくのかは、脂肪を受け入れる部位の微小環境によって決まると説明されています[4]。受け入れる部位の状態が生着に重要だという考えから、乳房再建の分野では、手術の前に体の外から組織を広げて、多量の脂肪が生き残りやすい土台をつくる方法も試みられてきました[5]。
この方法を扱ったレビューの著者らは、7年間に488人を対象とした多施設での経験をまとめたとしています[5]。ただし、論文の要旨には生着率のような具体的な結果の数値が示されておらず、効果の大きさをこの資料だけで判断することは難しいといえます。
幹細胞はどのような役割を果たしますか
注入する脂肪に、生きた脂肪由来幹細胞(adipose-derived stem cells)が含まれていることははっきりと確認されており、動物の研究では、この細胞のかなりの部分が注入の後も生き残っていました[4]。臨床研究では、やけどの傷跡に脂肪を注入した後に傷跡のスコアと傷跡のかたさが改善し、放射線治療を受けた組織の質もよくなりました[4]。
しかし、こうした効果が幹細胞によるものかどうかはまだはっきりしておらず、幹細胞を濃縮した脂肪注入を日常診療で用いることを裏づける根拠はないとしています[4]。一方、乳がんの手術後の脂肪注入については、臨床研究では再発のリスクが高まるというはっきりした根拠はないものの、脂肪細胞が腫瘍の成長を助ける可能性があるという前臨床の根拠があるため、まだ解決すべき問題が残っているとまとめられています[6]。
カウンセリングで確認したいこと
生着は施術の方法だけでなく、脂肪を受け入れる部位の状態や一人ひとりの組織の特徴によっても変わるため、同じ方法でも人によって結果が異なることがあります。次の内容を確認し、実際に診察した専門医と期待する結果をすり合わせておくことをおすすめします。
- 脂肪を採取する部位と、処理の方法
- ボリュームが減ったときの追加の施術の計画
- 傷跡や放射線治療など、脂肪を受け入れる部位の状態
- 幹細胞や添加する物質を使う場合は、その根拠と限界
よくある質問
参考文献
- Shih L, Davis MJ, Winocour SJ. The Science of Fat Grafting. Semin Plast Surg. 2020.PubMed 32071573DOI
- Davis S, Rizk J, Gunton JE. Cosmetic Fat Transplantation: A Review. Curr Mol Med. 2021.PubMed 32619169DOI
- Fontes T, Brandão I, Negrão R, et al. Autologous fat grafting: Harvesting techniques. Ann Med Surg (Lond). 2018.PubMed 30505441DOI
- Rinker BD, Vyas KS. Do Stem Cells Have an Effect When We Fat Graft? Ann Plast Surg. 2016.PubMed 26545225DOI
- Kosowski TR, Rigotti G, Khouri RK. Tissue-Engineered Autologous Breast Regeneration with Brava®-Assisted Fat Grafting. Clin Plast Surg. 2015.PubMed 26116938DOI
- Piccotti F, Rybinska I, Scoccia E, et al. Lipofilling in Breast Oncological Surgery: A Safe Opportunity or Risk for Cancer Recurrence? Int J Mol Sci. 2021.PubMed 33916703DOI
この記事は、DOY JUN美容外科が海外の学術誌に掲載された論文の要約(抄録)をもとに韓国語でまとめた一般的な健康情報を、翻訳したものです。治療方法や結果は個人の状態によって異なるため、正確な診断と治療計画は専門医へのご相談でご確認ください。