要点まとめ
- バストのインプラントを入れるスペースとしては、大胸筋の下のデュアルプレーン(dual-plane)と乳腺下(subglandular)がよく用いられます[1]。
- 大胸筋の下に入れた場合を扱ったレビューでは、被膜拘縮のリスクを報告した8件のうち6件が、表面がなめらかなインプラント(スムース)と表面がざらざらしたインプラント(テクスチャード)で、被膜拘縮の割合は同程度だと報告していました[2]。
- アジア人女性にはワキ切開が好まれており、内視鏡を用いて高い位置のデュアルプレーンをつくる方法が紹介されています[3]。
- まれな合併症である乳汁分泌と乳瘤では、乳腺下の位置が弱い危険因子の候補として示されましたが、症例が少ないため、確定的な結論を出すことは難しいとされています[5]。
- インプラントの位置によるメリットとデメリットは、バストの組織の厚みや希望する形によって変わるため、診察を通して決める必要があります。
インプラントを入れる層にはどのようなものがありますか
豊胸手術では、インプラントをどの層に入れるかが、切開の位置やインプラントの種類とあわせて、手術計画の中心となる選択です。2010年のレビューは、豊胸手術を米国の女性に最も多く行われている美容施術として紹介し、よく用いられるインプラントの位置として、大胸筋下のデュアルプレーン(subpectoral dual-plane)と乳腺下を挙げています[1]。
乳腺下の位置は一般に「大胸筋の上」とも呼ばれ、乳腺組織と大胸筋の間にインプラントを入れます。大胸筋下の位置は大胸筋の下にインプラントを入れる方法で、デュアルプレーンは、インプラントの上側は大胸筋の下に、下側は乳腺の下にくるように、大胸筋の下側の付着部を調整する方法です。
大胸筋を覆う薄い筋膜の下に入れる、大胸筋膜下(subfascial)という位置もあります。2015年の文献は、ワキ切開(腋窩切開)からアナトミカル型(しずく型)インプラントの上側を大胸筋の浅い筋膜の下に入れる方法を紹介しながら、大胸筋膜下の位置についての報告はまだ少ないと述べています[4]。
位置によって何が変わりますか
2010年のレビューは、インプラントで最も多い合併症として被膜拘縮(capsular contracture)を挙げています[1]。そのため、インプラントの位置や表面の種類が被膜拘縮とどのように関係するのかは、長く関心が持たれてきました。
大胸筋の下に入れたシリコンジェルインプラントを扱った2019年のレビューは、98件の関連文献を見つけましたが、治療効果を判断できるレベルの根拠を備えた研究はわずか数件だったと述べています[2]。そのうち、大胸筋下の位置で被膜拘縮のリスクを報告した8件のうち6件は、表面がなめらかなインプラントと表面がざらざらしたインプラントで、被膜拘縮の割合は同程度だと報告していました[2]。
同じ文献では、しわ(リップリング)、遅れて起こる漿液腫(late seroma)、二重被膜(double capsule)といった局所的な合併症は、表面がざらざらしたインプラントと関連していました。また、インプラント関連のリンパ腫(BIA-ALCL)はすべて表面がざらざらしたインプラントに関連しており、表面がなめらかなインプラントでは報告されていませんでした[2]。著者らは、大胸筋下の位置では、どちらかの表面がはっきりと有利だとはいえないと結論づけていますが、エビデンスレベルはVと低く示されています[2]。
ワキ切開とデュアルプレーン
2023年の文献は、アジアではインプラントを用いた豊胸手術が次第に広く受け入れられており、アジア人女性には今もワキ切開が好まれていると説明しています[3]。この文献は、ワキ切開に内視鏡をあわせて用いると、手術の過程をよりコントロールしやすくなり、合併症が減ると考え、高い位置のデュアルプレーンをつくる内視鏡補助下の方法を紹介しました[3]。
ただし、これは特定の手技を紹介する文献の見解であり、ほかの位置や切開と結果を数値で比較した研究ではありません。アジア人女性を対象とした資料であることは参考になりますが、一人ひとりの組織の厚みやバストの形によって、合う位置は変わることがあります。
まれな合併症:乳汁分泌と乳瘤
豊胸手術の後、まれに母乳のような分泌物が出る乳汁分泌(galactorrhea)や、乳汁がたまる乳瘤(galactocele)が起こることがあります。2021年のシステマティックレビューは、19件の文献から38人の症例を集めましたが、インプラントの位置は乳腺下が57%、大胸筋下が37%でした[5]。
著者らは、症例数が少なすぎて確定的な結論は出せないとしながらも、乳輪周囲切開、乳腺下のインプラント、ホルモン避妊薬(ピル)の服用歴、妊娠の経験、1年以内の最近の授乳経験が危険因子である可能性を、弱く示唆しています[5]。症状はたいてい3か月以内に始まっていました[5]。
技術の進歩と残された課題
2021年のレビューは、インプラント手術が始まってからほぼ70年の間に、結果を改善し合併症を減らすための技術や手技が発展してきたものの、新しい器具や手技が時の試練に耐えられるかどうかは、見守る必要があると述べています[6]。
2010年のレビューは、豊胸手術が乳がんのリスクを高めることはないとみられるとまとめています[1]。ただし乳がん検診を受けるときは、インプラントが入っていることとその位置を、あらかじめ伝えておくことをおすすめします。
今回参考にした資料の多くはレビューと手技の紹介で、位置ごとの結果を同じ条件で比較した研究は少ないものでした。そのため、どの位置が誰にとってもよいと言うことは難しいといえます。
カウンセリングで確認したいこと
インプラントの位置は、バストの組織の厚み、皮膚の弾力、希望する形など、さまざまな条件をあわせて見て決めます。診察では、次の内容を確認してみてください。
- ご自身のバストの組織の厚みに合ったインプラントの位置
- 選んだ位置と切開方法の組み合わせ
- 位置による被膜拘縮や形の変化の可能性
- インプラントの表面の種類と、それに伴うリスク
- 授乳の予定がある場合は、それに関して考慮すべき点
よくある質問
参考文献
- Pelosi MA 3rd, Pelosi MA 2nd. Breast augmentation. Obstet Gynecol Clin North Am. 2010.PubMed 21093748DOI
- Zingaretti N, Galvano F, Vittorini P, et al. Smooth Prosthesis: Our Experience and Current State of Art in the Use of Smooth Sub-muscular Silicone Gel Breast Implants. Aesthetic Plast Surg. 2019.PubMed 31342127DOI
- Luan J. Endoscopic-Assisted Transaxillary Breast Augmentation. Clin Plast Surg. 2023.PubMed 36396254DOI
- Munhoz AM, Gemperli R, Sampaio Goes JC. Transaxillary Subfascial Augmentation Mammaplasty with Anatomic Form-Stable Silicone Implants. Clin Plast Surg. 2015.PubMed 26408444DOI
- Sharma SC, Basu NN. Galactorrhea/Galactocele After Breast Augmentation: A Systematic Review. Ann Plast Surg. 2021.PubMed 32079808DOI
- Austin RE, Lista F, Ahmad J. Hot Topics in Breast Surgery. Clin Plast Surg. 2021.PubMed 33220900DOI
この記事は、DOY JUN美容外科が海外の学術誌に掲載された論文の要約(抄録)をもとに韓国語でまとめた一般的な健康情報を、翻訳したものです。治療方法や結果は個人の状態によって異なるため、正確な診断と治療計画は専門医へのご相談でご確認ください。




